十月読了記録

今月から

・読んだ本の五段階評価(絶対評価)に加えて、その中でもおもしろかった順に並べて(相対評価)みる。*1
・ネタばれにならない程度で印象的な部分を引用してみる(借りてきてもう返してしまった本や特に引用するところの無い本は除外)

※引用はあとで随時追加



八路軍軍医ノーマン・ベチューンの偉大なる生涯 (1966年) (東邦選書)

八路軍軍医ノーマン・ベチューンの偉大なる生涯 (1966年) (東邦選書)

★★★★☆

二人は村の門のほうに歩いていった。そのとき董が「先生を一人にしちゃいけないな」といった。
「そうだね」と方はため息をついた。
 二人は于の屋敷へとまたとってかえした。そしてベチューンの部屋の窓下にあるベンチに腰を下ろした。彼らが窓の外で見はりをしている間に、やがて太陽は谷間から徐じょに移っていた。村人は野良仕事が終わると屋敷の堀の外に集まり、気づかわしげに立ち並んだ。それはまるでこれから始まる村の集会を待っているようであった。そして夜になった。暗黒の中で村人は堀越しに董と方の姿をながめていたが、二人は身体を固くして窓の前に腰を下ろしていた。二人は目を大きく見開いて、ベチューンが炕の上に長々と横たわっている部屋をじっと見ていた。
「先生を見てくるよ」と方がとうとういいだした。「それに先生は残された時間をちゃんと数えあげてしまったような気がするんだ・・・・・・人もあろうに、先生はどんなに淋しいに違いない! 先生は死んじゃいけないんだ!」
 董は静かに、外聞もなく、頭をしゃんとしたまま涙を流していた。
「どうも涙もろくていかん」董はいった。「まるで泉のようにあとからあとからでてくるんだが、間もなくつき果てるだろう。僕がこれまで会った誰よりも、それが先生だけに一層つらいんだ。もし先生が死ぬようなことがあれば、二度目の死ということになるだろう。それにしてもまだ四十九才という若さではないか。わかるかい? 誰だって死ぬさ。僕らの仲間でもたくさんの人が死んだ。だが僕らは誰だって生命は一つだし、死ぬのは一回だけだ。ところが先生はいくつも生命を持っていたし、こんどだって二度目の臨終なんだ。これがわかるかい? こんどは先生が死んでゆく二度目なんだ。全中国の涙を流したって、先生の二度目の死を悼むことはできやしない・・・・・・」
「全中国どころか」と方がいった、「董同志、全世界の涙を合わせたってそれで足りることはないだろう」

聶将軍
 私は不運にも病気です。私は間もなく死ぬでしょう。最後にあたってあなたに二、三お願いしたいことがございます。
 カナダ・トロント在住のT・Bに私の運命を報知して下さるようお願い申し上げます。また中国援助協会(ニューヨーク)にも同様のこと。私が当地で幸福であった旨お伝えください。私がただ一つ残念に思うことは、私がこれ以上お役に立つことができないことです。


窯変 源氏物語〈5〉

窯変 源氏物語〈5〉

★★★★☆

 昼の内に見た姫の夢の中へ、死んだ父宮が現れたというのだ。すべてを奪われ、為す術もない絶望の中で、思いに濡れる心というものを摩滅させていた姫は、不意打ちのように襲いかかってきた熱い心のときめきに、改めて生きるということを知った。自分は生きているのだし、生きるということは熱い思いの戦きに身を揺することだと、末摘花の姫は初めて、生きる辛さを、我が身に熱い血潮の蘇る喜びとして捉え直した。
(略)
 たとえそれが生きる甲斐のない世ではあっても、自分という存在は、生きる甲斐のない人間ではないのだということを、熱い夢のときめきが教えてくれた。
「たとえ自分がこの世と相容れないものであっても、自分の中に宿るこの思いの熱い記憶は、生きることを諦めるなと告げている」と。
(略)
 水に濡れた床の黒さが、新たな若葉を生む大地の豊かさと思われて、末摘花の姫は声を上げた――「私は死んではいない!」と

★★★★☆


[rakuten:book:13588137:detail]
★★★☆☆

処分された学生たちは、アメリカ合衆国に対して公正さを要求する沖縄社会と、誕生したばかりの大学が成長するための「スケープゴート」となった。すなわち、学生たちは、社会と大学の両方の苦しみを負わされて荒野に放たれた「贖罪の羊」であった。民主主義の精神が凍結されたような五〇年代に、一条の自由の光をもたらそうとしたこの方々の勇気に、私は深い敬意を表したいと思う。一九五六年からすでに五十年、琉大同窓会が中心となって名誉回復運動も始まっている。この方々が耐えてきた年月が報いられることを、切に願うばかりである。

★★★☆☆


女子の古本屋

女子の古本屋

★★★☆☆


砂の覇王〈5〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

砂の覇王〈5〉―流血女神伝 (コバルト文庫)

★★★☆☆


★★★☆☆

「そうじゃなくちゃできない、俺ひとりじゃできない音ってやつが! すぐ近くにあるんだ・・・・・・! あとは、ホントにするだけなんだ!」
(略)
「桐哉はあんなふうに俺のこと天才だなんて言うけど、でもそんなのカンチガイだよ。俺のこと、魔法みたいにどんな音でもつくれるって思ってるけど、そんなの嘘だよ・・・・・・。俺は俺の音しかつくれない。そんなんじゃ俺は嫌なんだ」


私の男

私の男

★★★☆☆

★★☆☆☆

「それも全部当てはまりますが、一番大きな理由は僕が君のことを愛していないからです」


平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)

平台がおまちかね (創元クライム・クラブ)

★★☆☆☆


★★☆☆☆

*1:このおもしろかった順に並べるのは今月からで、以前のものにはあてはまりません