高江ヘリパッドについて


 続いて、高江ヘリパッドについて私なりにまとめた文章の部分を置いておく。

 しかし、高江についてのまとまった文献はほぼ無くいちいち過去の新聞から関連記事を探すのも大変なので、このまとめは手元にあった高江住民と支援者作成のパンフと私の記憶(昔新聞で読んだこと、私自身が見聞きしたこと)を主に頼りにして書いた。なのでこれを読む際には、参考文献が限られている点と私の記憶違い(混同)がある可能性に留意して読んでほしい。
 ただ大筋では特に間違っている部分はないと思う。もし(見解の相違ではなく)明らかな事実誤認を見つけた際にはご指摘ください*1


・場所

 高江は沖縄本島北部にある東村にある地域で「高江区」と呼ばれます。
 東村は辺野古のある名護市よりさらに北にあり、その広大な東村の北の端にある高江へは県の中心地・那覇市からでは高速道路を使っても片道2時間以上かかり、バスは早朝と夕方に計3本あるだけで、自家用車を使わなければほぼ訪れることは不可能です(これが抗議活動をより困難にしています)。
 高江区の人口は約160人。しかし人口の割りに子供の数は多い。主に農業が行われています。
 周辺はヤンバルの豊かな森に囲まれています。森の中にはノグチゲラヤンバルクイナ,ヤマガメなどの天然記念物や固有種も多く、本来で生物多様性を守る立場から適切な自然保護が行われなければならない場所と言えるでしょう。
 また周辺に沖縄県民の水道水を支える3つのダムがあり、沖縄本島の水がめともなっている地域です。


・米軍基地 

 しかし同時にここは米軍の北部訓練場と隣接する地域でもあります。北部訓練場とは、米軍がジャングルでの戦闘・サバイバルを訓練するための施設です。
 現在でも東村の村内にある北部訓練場の敷地内には施設の一種として15箇所のヘリパッド(ヘリコプター離着陸帯)があり、住民は爆音や事故の危険と隣り合わせの生活を強いられています。


・新ヘリパッドの建設とその経緯

 今回、問題となっているのはすでに15箇所のヘリパッドを持つ東村に新たに6箇所のヘリパッドが建設されることです。この6箇所のヘリパッドが建設されますと、ちょうど高江区がヘリパッドに包囲されるような形になってしまうので、住民は大いに不安になり、反対しているのです。
参考:http://helipad-verybad.org/modules/d3blog/details.php?bid=38

 高江に新たにヘリパッドが作られることになったのは、1996年のSACO合意に基づきます。SACO合意では、普天間基地を返還する変わりに本島北部に代替施設を作ることが日米両政府で「合意」され、今の辺野古「移設」問題につながっています。この普天間関係の他に重要な「合意」として、北部訓練場の半分(本島最北端の国頭村の部分)を返還する代わりに、返還地域内にあるヘリパッドを高江に移設することが決められました。
 これが今の高江ヘリパッド問題の発端です。


沖縄県・東村・高江区の反応 
 
 残念ながら沖縄県も東村も現状では「ヘリパッドの移設も止む無し」という立場です。しかし、高江区は小規模集落であるため、東村の議会に村議を送ることもできず、意見を表明する場もありませんでした。
 そこで高江区は区民総会で二度に渡り、全会一致で移設反対決議をあげました。また、沖縄防衛局が高江区への移設を決めた2006年ごろより反対運動も本格化し、工事車両の出入り口となり移設場所へ続く2つの北部訓練場ゲート前に監視テントを立てるなどしました。
 

・防衛局が高江住民を提訴 

 2008年11月、防衛局は「座り込みが工事を妨害している」と言って那覇地裁に「通行妨害禁止仮処分命令」を申し立て、高江住民15人を訴えました。この中には現場にいなかった8歳の子どもまで入っていました(後にこの子どもに対しては訴えを取り下げ)。
 最終的に14人が訴えられましたが、そのうち12人に関しては裁判所は防衛局の訴えを全面的に却下。しかし「住民の会」共同代表の2人に対しては、「妨害行為があった」と認定し、通行妨害禁止の仮処分を認めました。これは現在係争中です。
 一方、裁判所は座り込みという抗議のあり方を認め、「住民と防衛局側は話しあうべき」と双方に諭しました。しかし、防衛局側は話し合いには応じず、裁判係争中であるにも関わらず、工事を強行しました。


・米軍ヘリによる監視テント倒壊事件 
 昨年末、ゲート前(当然民間地域)にあった監視テントが、超低空飛行による風圧で破壊され、泊まっていた支援者一人があやうく怪我をしそうになった事件も起きました。この件について、住民らは沖縄防衛局に米軍に問い合わせて真相究明をするよう求めましたが、まだ何も解決していません。


・米軍の思惑・北部の軍事要塞化 

 高江へのヘリパッド建設を求める米軍の思惑ですが、以下のようなことが言われています。
 米軍はヘリパッド移設とともに上陸訓練のための水域と土地も求めており、特に高江近辺を流れる宇嘉川流域と河口が狙われています。ここを高江のヘリパッドと併せて使用することで、米軍は辺野古へのアクセスが格段に便利になります。
 つまり「辺野古新基地」「辺野古弾薬庫」「高江ヘリパッド」「(返還しない)北部訓練場」「宇嘉川流域の上陸訓練場」そして金武町の「キャンプハンセン・都市型訓練施設」など一連の米軍施設が有機的に結合することになり、本島北部の軍事要塞化とも言うべき状態になります。


オスプレイの配備 

 さらに事態を由々しくしているのは、高江のヘリパッドにオスプレイが配備されるのではないかという疑惑です。
 オスプレイは積載能力と飛行距離に優れていますが、今まで多数の事故を起こし「空飛ぶ棺桶」とも言われるほどで、米国でもすでに製造も禁止されています。しかし、日米政府は既存のオスプレイ辺野古および高江で使用することを狙っていると言われています。はっきりと明言はしていませんが、辺野古や高江の施設の様子からオスプレイ向きの施設であると言われています。
 オスプレイの配備によって米軍の軍事力・基地機能が強化されるだけでなく、高江の集落から400メートルしか離れていないヘリッパドにそのような欠陥ヘリが離着陸することも高江住民の恐怖となっています。


・反対の論点 

 なぜ高江ヘリパッドに反対しなければならないのか? その理由は人それぞれでありますが、およそ以下のような点にまとめることができるでしょう。
 どれが他の反対理由より優先され正しいか、という話ではなく、一人一人がそれぞれの問題意識に基づいて考えることだと思います。どれか一つだけの理由でもいいし、これらはすべて相互につながっていると考えても良いでしょう。

1.ヘリパッドによる集落包囲・オスプレイの配備などによって高江住民の生活・生命が脅かされる。
2、「沖縄の負担軽減」の美名のもと、北部の軍事要塞化が進み、実際には基地機能の強化・固定化ということになる。
3、沖縄の基地が強化・固定化されることにより、東アジアの軍事的緊張感が高まる、およびベトナム戦争イラク戦争の時のように米軍の出撃基地の島としてその加害行為に加担することになる。
4、注目されていない高江にまず手をつけることによって、膠着状態に陥っている辺野古「移設」へのきっかけ・はずみがつけられる。
5、天然記念物や固有種も多いヤンバルの豊かな自然が破壊され、種の絶滅など生物多様性が損なわれる。
6、沖縄の水がめである地域が汚染される危険(=沖縄本島全体に健康被害が出る)がある。

 まだ見落としている論点があるかもしれませんが、こんな感じでしょう。



・現状

 昨年末より活発な動きを見せていた沖縄防衛局ですが、2月1日より大量の職員・土木作業員を現地に派遣し、工事を強行しています。平均100人以上、最大で200人、10tトラック二台で小さな集落に連日押し寄せています。
 それに対して住民・支援者はだいたい50〜70人ほどで工事現場である北部訓練場敷地に通じる2つのゲート前を車でふさぎさらにトラック前に座り込むなどして、作業員や土嚢を積んだトラックがゲートから中に入るのを防いでいます。
 そこで沖縄防衛局は、作業員をゲートから離れた山の中から工事現場に向かわせ、工事に必要な砂利を入れた土嚢はバリケードより高い10tトラックの荷台から米軍施設内に投げ込み、山中を歩いて中に入った作業員が手作業で工事現場まで運んでいます。
 ゲートを封鎖することで作業がスムーズに行かないのは確かなのですが、それでも着実に進んでいるのが現状です。
 
 また作業員は沖縄の青年で、この不況の中、防衛局に対して立場の弱い人々なので、住民・支援者ともに彼らと敵対的になることは避けています。もちろん工事中は抗議するのですが、彼らに対してはキツイ言葉遣いは避け、機会があれば話し合い、作業をまじめに行わないよう、安全には充分気をつけるよう説得をしています。
参考http://takae.ti-da.net/e3344496.html(作業員のみなさまへ)

 その一方で、沖縄防衛局は雨の山中や斜面での危険な作業を作業員に強要し、あたりが暗くなるまでやらせています。一度は、作業員の一人が日の暮れた山の中で1時間ほど迷子になる事件も起きました。



 現地の状況はこんな感じです。本日もけが人が出かけないほどの強行さで工事が進められています。
 住民らは現地に来られない人々に、沖縄防衛局・防衛省などへの抗議。議員へ工事中止の要請。各種メディアに高江の惨状を取り上げてくれるよう要請してくれることを求めています。』

*1:しばらくネットが出来なくなりそうなので対応は遅れますが