私のために書いてくれたんですか?
叫んでばっかりですいません。
以下、痛い中国の話(でもないな)なので注意。ちなみに痛いのは中国ではなく、私です。
検索よけのため、人物名をひらがなで表記します。
(後で消すかもしれません)
あるお方から「POPPEN38さん、もうこれ読みましたか?」と紹介されました。
- 作者: 姫田光義
- 出版社/メーカー: 中央大学出版部
- 発売日: 2009/07
- メディア: 単行本
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………………うあああああーー!! 姫田先生、いつのまにこんなオイシイ本出したの? えっ、今年の7月、最近じゃん!
ああ、先日まで夏コミの新刊のため寝ても*1覚めても林/彪のことばかり考えていたのですが、原稿終わって現代日本に復帰しようとリハビリしている最中にこんな爆弾が投下されるとは! あと一週間早くこの本の存在を知っていたら……原稿は落ちていたな……。
さて、姫田先生と言えば、中国現代史の著名な学者の一人。そのお方が、丸々一冊、林/彪(りんぴょう)について書いてくださるとは……。
もっとも、だいぶ前になるけど先生はりんぴょう事件に関しての本を出しています。
- 作者: 森沢幸,姫田光義
- 出版社/メーカー: 日中出版
- 発売日: 1975
- メディア: ?
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これはお勧め。中にけっこう長々とりんぴょうの経歴を解説しているけど、なかなかよくりんぴょうという人物を分析していると思う。
その先生が満を持して丸々一冊、りんぴょうについて書いてくれるとは、嫌でも期待が高まる。
よく考えたら、りんぴょう失脚後、初めての商業出版におけるりんぴょうそのものを扱った本ではないだろうか?*2
とりあえず、そっこー図書館に行ってお願いしてきたのだが(4800円の本はさすがに買えない)、どんなふうに書いてあるか楽しみ。以下のようなことが書いてあったら万々歳なのだが。
・りんぴょうのブラコンぶり、弟属性*3
・りんぴょう事件を知った後、彭/徳/懐(ほうとくかい)がりんぴょうを弁護し、その無実を訴えた件についての分析。最低でもそういうことがあったの紹介は欲しい。
・香港で公開された文革中のりんぴょうの日記について
・りんぴょうのヤンデレぶり
りんぴょうの弟属性についてだが、中国革命のリーダーたちって何気に長男が多いんだよね。毛沢東しかり周恩来しかり勝g小平、朱/徳、彭/徳/懐も長男だ。しかもたいてい男兄弟ばかりの一番上の兄である。しかしりんぴょうは次男だった。ただし実際の兄弟との縁は薄く、革命の先輩である従兄弟二人の末の弟というのを自らのアイデンティティにしていたふしがある*4。りんぴょうが結局、毛や周に勝てなかったのも長男属性の彼らに比べて弟して育った彼はどうしても爪が甘かったのかもしれない、と思わなくもない。
……いや、そうじゃなくて。
とりあえず兄弟好きとしては、りんぴょうが二人の兄をいかに慕っていたか、その二人を革命の途上で次々失ってしまった*5ことがどうゆう影響を与えたかを書いてくれれば!
彭/徳/懐のりんぴょう弁護についてだが、彭/徳/懐は中華人民共和国の初代国防相。しかし大躍進の失敗を批判したために失脚、文革中は八年におよぶ監禁、百回以上に分かる精神的肉体的虐待を受け亡くなっている。いまだに中国内外で人気が高い。
従来、りんぴょうはこの彭/徳/懐失脚および文革における残虐な虐待に大いに関わっていたとされ、彭/徳/懐はりんぴょうの最大の被害者の一人としてとらえられている。しかし、りんぴょう事件とりんぴょうが「反党反国の大罪人」と規定されたことを知った時、彭/徳/懐は自らも獄中で拷問を受ける身でありながら、りんぴょうの無実を訴えていたことが最近明らかになった。おそらく、最大の被害者であるはずの彼こそ、加害者であるりんぴょうの「無実」を事件当時から訴えたほぼ唯一の人物であろう。これは何故か、ぜひ先生の見解を聞きたい。
さて、そうやって期待が膨らむ一方で、少々読むのが怖くもある。
近年、中国革命に対する評価は厳しくなる一方だが、その中にあって姫田先生はどんな評価を本の中で下すだろう。
『中国の政治と林彪事件』において、先生は当時の左派学者としては珍しくかなり痛烈な批判を展開している。しかしそのような批判ができたのも、そもそも当時の先生が、実は中国に対する揺るぎない信頼と中国革命に対する深い愛情があったゆえのことではないか。根本的なところで相手に対して信頼と愛情を抱くゆえに安心して批判が出来たのではないか……とちょっと思う。
この安心というのは、別に中国に消される(笑)という話ではなく、批判をしたとしても自らの中の「中国」像を根本的なところで損なわないということを指す。
- 作者: 姫田光義
- 出版社/メーカー: 桜井書店
- 発売日: 2000/04
- メディア: 単行本
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2000年に出たこの本では、先生の「中国」「中国革命」に対する葛藤や迷いが感じられて読んでいて胸がつまる。もちろん私はその葛藤を馬鹿にしない、むしろ共感する。
それからさらに9年。ますます中国革命に対する評価が厳しくなる中で、迷いと葛藤の中にいた先生がどんな評価に至っているか、ちょっと知るのが怖くもある。