11月24日〜12月1日

中国での日々のつれづれを何日間かまとめて書く日記。
見聞きしたことや食べ物で当たりだったものの記録。


11月24日 本屋巡り


 明日、日本に一時帰国するので、書店を巡って欲しかった本を買い荷物につめる。どうせ2月に帰国する頃までにまた持ちきれないほど買ってしまうのだから、今回持ち帰れる分だけ先に持ち帰る。
 主に中国革命の人物伝記や八路軍関係の資料を買う。中国の本は安くて金銭的にはたくさん買ってもあまり負担はないのだが・・・問題は置き場所だ。すでに沖縄の家に本を置くスペースはほとんどない。特に八路軍関係の本は山ほどあるので相当迷ったが、よくまとまった最新の研究書が出ていたのでつい買ってしまう。・・・古い類似書は中文古書店に売ってしまおう。
 『涼宮ハルヒ』シリーズの中文版が出ていたので、中国語の勉強のために買っておく(日本に帰国したら原作を買っておこう)。まあ、ハルヒ語なんて覚えたら問題かもしれんが、こういう本は語学の教科書では学べないような会話回しが学べる。地の文が一人称なのも良い。・・・・・・しかし問題は中文版も9冊全部出ているのだが、分冊での販売は一切しないとのこと・・・勉強用なので1,2冊で良かった9冊全部まとめて買うしかなかった。半分勉強用に中国に残し、半分日本に置いておく。
 他に珍しく小説を数冊。『日本八路』という興味深い題材のものがあった。日中戦争八路軍に参加することになった日本兵の物語? もう1遍『山河』という小説も日本軍人の内面にかなり踏み込んでいる模様。「私はね、中国も中国人のことも心より愛しているのですよ。私の敵は中国の民衆ではありません。彼らを苦しめる匪賊や匪党なのです」パラパラと読んでみたところそんな日本軍人の台詞があった。この悪意なきあまりに度し難い傲慢さと自己中心性、もし作者が狙って書いているならなかなかのものだと思う。それにしても『狙撃手』といい、一連の小説といい最近の中国では日本軍人の内面を踏み込んで書くことが流行っているのだろうか。この分野では、日本の表現者が中国の表現者に追い抜かれる日も近いかもしれない。*1


11月25日ワンダーワールド


 沖縄に行くため、香港空港へ。
 空港の本屋だからかもしれないのだが、いつ来ても歴史関係の書棚はほぼ反中共本一色で、なかなかセンセーショナルなタイトルおどろおどろしい表紙でその一角は一種異様な雰囲気を醸し出している。
 まあ、批判するのは別にいいのだけど・・・・・・。
 香港のその手の本は表紙に(日本で言う帯代わりに)センセーショナルな煽り文句が印刷されていたりする、『この本では中共のこんなことやあんなことを暴露していますよ!!』みたいな感じで。本を開くと目次のページにも似たような過激な文言が踊っている。
 で、実際に内容を読むと・・・今までの私の経験からすると5割以上の確立で拍子抜けする。簡単に言うとタイトルやあおり文句に比べて全然たいしたことが書いていない。ひどいのになるとそもそもタイトルやあおり文句と内容が一致しない、と言うか、そこで取り上げられている問題にそのようなタイトルや煽り文句をつけるのは明らかに不適当な誇大広告すぎてJAROに訴えられても文句言えないレベルだったり。あるいは資料の中で(その資料の全体の趣旨は別であるにも関わらず)都合の良い一部だけ取り出したり、こじつけたり、歴史学者の間ではかなり信憑性に疑問を持たれている資料を使ったり復刻したり。今までで一番ひどいのはある人物の発言を勝手に改変しているのまであった・・・・・・。*2
 う〜ん、本屋の目立つところに置いてあるその手の本をランダムに選んでいるのにほぼ必ず上記のような問題にぶち当たる上に、しかも決して中国語をすらすら読めるわけではない私が立ち読みでななめ読みしただけでツッコミができるレベルというのが一番の問題なのではないかい? そしてそういう本をまた日本の保守文化人が妙に有難がっている傾向があるのが一番うんざりすることだが。
 香港の本には資料的価値が高かったり、興味深い研究のもたくさんあるのだが、そういうのはだいたい本屋の目立たない所にあります。


11月26日〜11月29日 在沖縄


 暑い! バス遅い!(安全運転だからです)。『風が強く吹いている』の映画、見に行く時間がなかった! 中島みゆきの新アルバムが出ていた!(ゲット) 店員さんが親切すぎてこちらがビクビクしちゃう! って言うか人がいない道がある!(中国はどこでも人が溢れています)
 とりあえず、市内バスに乗っているはずなのにジェットコースターに乗っているような気分にを味わえる中国のバスに乗りなれてしまうと、沖縄のバスのスピードが止まっているかのように感じます。・・・そう言えば、中国のバスって何かに似ていると思ったら、あれだ、トトロの猫バス。あれと違うのはすわり心地と障害物の方が避けてくれるわけじゃない点だな。中国のバスの運転手のハンドルさばきととっさの判断力はまことにすばらしい。


12月1日 ピンポイントすぎる


 中国で中国語を学ぶ外国人向けの語学教科書を読んだ。その中の例文に、アメリカからの留学生の男が両親が大学教授の中国人の家に招待されるという話がある。その家の書斎を覗かせてもらうと、大学教授の書棚らしく歴史や哲学、文学の研究書がズラリ。しかしほとんどの本はそのアメリカ人留学生にはわからないものばかり。彼は独白する。「ここにある本はほとんどわからない。ただ魯迅毛沢東、勝g小平の名前だけはわかる。何故なら私は留学する前、彼らの著作を英語で読んでいたからだ」
 ……魯迅はともかく、毛沢東や勝g小平の著作をピンポイントで(しかも英語で)読むこのアメリカ人はいったいどういう設定なんだ? しかも他の本のことはわからないというから中国について幅広く学んでいてその一環として彼らの本を読んだわけじゃないよな・・・・・・。よっぽどの確信犯かまったく何も知らないかのどちらかかな?*3

*1:と言うよりもう特に追い抜かされていると言ったほうが正しいかも。戦時中に書かれた『南京慟哭』なんて傑作だと思う。

*2:ちなみに日本でも訳本が出ている鄭義という人が編集している本には高確率で上記のような問題がある。鄭義自身は原稿を募って編集する役どころだが、発言改変があったのも彼の本。

*3:ちなみい中国の外国人向けの語学教科書がこの手の話で埋まっているというわけではまったくない。むしろどういうものであれ少しでも政治臭のする例文は避けられているし、この二人の名前も300ページある本の真ん中くらいで初めて出てきてそれっきりだった