米兵によるひき逃げ死亡事故の続報


昨年11月に沖縄県読谷村で起きたひき逃げ死亡事故。「県警が書類送検」と聞いてやっと少し動いたか、と思ったが、甘かったようだ。

読谷ひき逃げ、米兵を書類送検 県警、過失致死疑い


 昨年11月、読谷村楚辺で同村に住む男性=当時(66)=が車にはねられ死亡した事件で、県警は4日、安全注意を怠った自動車運転過失致死容疑で米陸軍トリイ通信施設の在沖米陸軍特殊部隊グリーンベレー所属の2等軍曹、クライド・アンドリュー・ガン容疑者(27)を身柄不拘束のまま書類送検した。県警は引き続き救護と通報を怠ったひき逃げの道路交通法違反容疑での立件を目指す。那覇地検の起訴後にガン容疑者は県警に引き渡されるが、弁護人によると同容疑者は事情聴取拒否を続ける姿勢で、ひき逃げの捜査は難航しそうだ。
 県警は当初からひき逃げの立件を目指したが、ガン容疑者が事情聴取を拒み、車両の血痕と被害者の血液のDNAの一致など、物的証拠による自動車運転過失致死の送検にとどまった。同容疑者が聴取を拒み続けた場合、ひき逃げの立件が困難な事態も想定される。
 読谷村は村民大会で起訴前の身柄引き渡しを要求。県議会や県町村議会議長会、19市町村議会も身柄の引き渡しと地位協定の見直しを求める抗議決議と意見書を可決した。しかし、政府は米側に身柄引き渡しを求めず、県も捜査協力を求めるにとどめ、県警は逮捕状を請求しなかった。
 県警によると、ガン容疑者の容疑は、2009年11月7日午前5時50分ごろ旧米軍補助飛行場の外周道路を普通乗用車で運転中、時速約55キロで男性をはね、頸椎(けいつい)骨折などで死亡させた疑い。
 弁護人によるとガン容疑者はこれまで、取り調べの録画や法務官の同席を要求して県警の事情聴取を拒否。
 一方、同容疑者は弁護人に対し「人をはねたかもしれない。そうだとすれば遺族に謝りたい」と話している。
 米軍は身柄引き渡しについて「起訴の情報がないので今はコメントできない」とした。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-155144-storytopic-111.html


事情聴取「ひき逃げ」ではなく「過失致死」容疑でらしい。でもとりあえず「過失致死」でも逮捕状をとって身柄を確保すれば捜査に進展が・・・というのも甘い考えなんだな。


政府 前例作り回避か 「逃げ得」の可能性も

だが同容疑者は、今後も供述拒否の意向を示しており、県警が目指すひき逃げ(道交法違反)容疑での立件は困難を極め「逃げ得」(捜査関係者)になる可能性も出てきた。今回、県警が起訴前の身柄引き渡しを求めなかった背景に上級官庁の意向を示唆する捜査関係者の声もあり、政府が米側に引き渡しを拒否される「前例づくりを避けた」との見方もある。
(中略)
 「政府は前例をつくりたくなかったのではないか」とある捜査関係者は振り返る。日米地位協定が絡む重要事件では、県警に独立捜査権があるものの「指導、助言」と称して実質的に警察庁など上級官庁の意向が捜査に反映されるといい、今回もその調整はあったもようだ。
 日本側が身柄の引き渡しを求め、日米合同委員会で米側が拒んだ場合「ひき逃げ死亡事件が、起訴前の身柄引き渡しに該当しないという日米地位協定の解釈が固定化される」(捜査関係者)として、米側に引き渡しを拒否された事例ができるのを日本側が嫌ったとみられる

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-155159-storytopic-111.html

なぜ逮捕できない 読谷関係者、県の“及び腰”不満


 安田慶造読谷村長は「容疑者がひき逃げした記憶がないというような主張をした場合、今後、ひき逃げ死亡事件として立件しきれるのか。これが単なる交通死亡事故で終わるのか、そこが非常に気になる」と事件の真相が迷宮入りすることに懸念を示した。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-155162-storytopic-111.html


 政府は米側に引渡し拒否されることを恐れ、そもそも引き渡しを要求しなかった。要求しなければ拒否されることはない、というわけだ。
 しかし事情聴取ができなかったためにひき逃げでの立件ができないとなれば、それは在沖米兵に「事情聴取や任意出頭に応じなければ犯罪の立件ができなくなる」という認識を与え、まさしくこれが前例となって、今後、任意出頭を拒否*1する米兵が多くなりはしないか。

 ちなみに容疑者の言う「人をはねたかもしれない」という状況は、沖縄の作家・目取真俊のブログによると以下の通り。

被害者がボンネットに乗り上げてフロントガラスが割れるほどの事故だったのだ。それでもガン容疑者は、ひいたという自覚がないというのか。ガン容疑者の衣服には被害者の血も付いていた。

http://blog.goo.ne.jp/awamori777/e/8d37dc446aa3c053cca66ccc3c3ae738

 この容疑者はもし戦場に行って民間人を撃っても「撃ったかどうかわからない」とか言うのであろうか。
 今までの捜査によれば飲酒運転の可能性や事故後被害者を移動させて事故の隠蔽を図った疑いもあると言う。
 報道を見る限り、事故現場は「読谷補助飛行場跡」ではないかと思う。そこは元米軍の飛行場の滑走路がそのまま道路になったもので、要するにものすごくまっすぐな長く幅も広い道路である。左右には畑が広がり、視界を遮るものはほぼ皆無だ。道脇から人が突然飛び出してきたって、見通しがよすぎるため運転者は必ずそれに気付くだろう。普通に運転していれば、何をどう間違ったて昼間に人をはねる方が難しいような場所である。
 今回の事故は目撃者もいない。しかし事故の直後にまさしく容疑者が近くの自動車修理工場に車を持ち込み、氏名と連絡先を書いていたため、容疑者の特定が可能になった。・・・・・・以前も書いたが、ひき逃げの直後にその車を近くの修理工場に持ち込むとはどういう神経をしているのだろう。もしかして容疑者は本当に人をはねた自覚がないのかと思うが、車のフロントガラスが割れボンネットもへこんでいるのに気付かなかったとしたらやはり相当泥酔していたのかもしれない。

 しかし「どういう神経をしているのか」と疑問に思うのはこの米兵に対してだけではない。
 日本にいないので正確にはわからないが、yahooニュースの項目を見る限り、この事件が果たして沖縄県外で広く知られているのか極めて疑問だ。それでいて、世間は普天間基地の「移設」先はどこがいいかだとか、アメリカが怒っていて日米間の信頼がどうだとか、沖縄に基地を置くのは合理性があるとか・・・・・・まったくどーいう神経をしているのかな?
 沖縄の被害はフロントガラスがへこむなんてレベルじゃないが、見えない人には、たとえ自分が被害者の血にまみれていても何も見えないらしい。もしかして「沖縄県民には基地による被害を与えているかもしれない。だとしたら謝りたい」とか言いながら、なんとかして沖縄に基地を固定化させようとしている、ってことかね?

*1:もちろん任意出頭の拒否は権利ではあるが・・・ただでさえ県警は基地内の証拠物件を捜査することができないため米兵への事情聴取は捜査にとって極めて重要である。それで何も捜査できないから「任意」以上の段階へ進めることも難しくなるだろう